異常時のリーダーシップ(4/4) 復旧のリーダーシップ

著者: エイム研究所 矢野 弘

● 協力会社への支援

部材の調達先である仕入れ先も被害を受けた場合は、協力会社に対しての復旧活動を行う。部材メーカーは中小の企業が多いため、復旧しようにも人手不足になる。また資金も足りない。

復旧の応援に行っても工程や設備の事情が分からないので、よく知った人がいないといけない。ところが、その人の自宅が被災している場合は会社より家の方が優先になるため出社はできない。

そこで、その人が出社できるよう家に行って片付けや復旧の支援をする。生活必需品の買い出しに行ったり、トイレの詰まりを直したり、家族への心配をすることなく落ち着いて出社できるようにしていく。

 

● 復旧のスピードアップ

「お金と時間」に対する考え方であるが、復旧が遅れた分は売り上げや利益が落ちる。国内の企業間競争では同業者は遠慮して市場を奪い取ることはしないが、国境を越えるとここぞとばかりに奪いにくる。

復旧が終わっても売り上げが元に戻るとは限らない。そこで早期に復旧するためには、自社のみならず協力会社へも金をかけて早い支援をする。安さを求めるのは平常時であるが、異常時は、安いが遅いではチャンスを失い会社の存続そのものが危うくなる。

最初にてこずるのは、使えなくなった部材や壊れた機器、不要品が多く出てくることである。公共の道路に山積みするわけにはいかないため産業廃棄物としてゴミ収拾車を呼ばなければならない。

そこでタウンページを開き、片っ端から電話を掛けて、最初に来てくれる会社に頼む。とにかく潔く捨てる、整理をして、満杯になれば運転手になんども頼み、整理して場所を空けていく。

 

プレス機のように大きな設備が倒れている場合は、起こすのにクレーンが必要になる。たとえば工場の中にクレーンが入れそうもないときは「道路幅10 メートルで、そこからクレーンの腕を伸ばして15 メートルの所で5トンのプレス機を起こしてほしい」と具体的なことを伝えて頼む。

値段は言い値で速さを優先する。優先するものから復旧しなければ次の設備に取りかかれないのでお金が掛かっても早く対応してもらえる会社に頼む。後で経理が請求書の伝票を見てびっくりするかもしれないけれども、それはそれである。

大切なのは決断のタイミングである。どんなに良い案でも、安価でも、タイミングが遅れると全く効果はない。どんなにすてきなウエディングドレスでも結婚式の後に届いたのでは役に立たない。

一極集中だと被害が大きくなるため、リスク分散として生産場所を分散する考えがあるが、グローバルになった現在では、どこかの部材が一種類でも停止してしまえば生産はできない。

大切なのは災害が起きたときに早く復旧する力、つまりリスクに立ち向かう強さである。

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