著者: エイム研究所 矢野 弘
改善に取り組もうとして現場を見た瞬間に「あっ!こうなる!」という姿が頭に思い浮かぶことがある。その後すぐに頭の中に「こうして、ああして」と具体的な課題が一つ一つ湧き出てくる。すると行動(改善)にかき立てられ、それは自分の運命とも思える衝動がはしるのである。
数値的な目標でもない、未来の思い描いた姿(イメージ)を実現したくてたまらない状態なのである。改善の課題がさらに具体的な案として一つずつ浮かぶと、夢が願望に変わり「この分野では業界一番、日本一、世界一になる」と方向のついた夢になる。そしてそばにいる人に話したくてたまらなくなる。
個人の人生で夢を持つのも大切であるが、共有できるものづくりの夢を持つことも大切である。夢を実現するための課題が浮かぶと同時に、それをなし遂げられる人物も浮かんでくる。その人と一緒に悪戦苦闘している姿も浮かぶようになり、変な意味で自分の夢に酔っているかもしれない。
簡単な課題でも一つでもこなすと確実にその夢に近づいていく実感が湧く。現実的にはいつになるか分からないが思いの中ではできているので不安がない。その姿を信念とういことかもしれない。その夢がかなうか叶わないか他人からみれば分からないかもしれないが、確実に言えることは、世界の中でその夢に確実に必ず近づいているのは自分自身である。逆に、途中であきらめるということは世界一近いのにそれを逃すことである。
人は不思議な物で形に無い夢や構想についていき、集まるのである。トップがこの夢を持っているならばその会社に係わっている人たちは幸せになることができる。
夜にみる夢は空想であり実現できないが、朝早く起きて現場に行って思い描いた夢は実現できる。
<余談>
トヨタ自主研究会というものがあった。これは亡き大野耐一氏がつくられた、ものづくりの改善活動である。この活動は朝から改善にかかり昼間には成果を出し、夜にまとめあげる進め方である。とにかくあるべき姿や狙う姿に向けて決してあきらめることなく進める。
現場が稼働しているときに変えるのである。生産に支障をきたすからといって夜に止まるまで待って変えることはしない。変えた結果を直ぐに把握するためには流れている時でしかない。夜に考えて変えたことには心に隙がでて欲がはいって方向がおかしくなることが多い。
朝、考えて朝おこなったことは集中力があり真剣に変えることができる。この取り組み方も私の志しのひとつかもしれない。DNAといわれればそうかもしれない。